ご覧いただきありがとうございます。
2020年4月、がん告知を受け、
精密検査の結果を待っているときのお話です。
いつもの病院の待合室。
多くの人々で、待合室の長椅子も、
いっぱいでした。
しかし、なぜか私の座っている長椅子には、
隣には誰もいませんでした。
結果を待つ間は、
不安と恐怖で、前の壁をじっと見つめているだけでした。
ふと隣に座る人の気配がしました。
既に亡くなった父でした。
私の方を見るのではなく、何も言わず、
父も私の同じ視線の方向を、
不安そうにじっと見ていました。
父は10年ほど前に82歳で亡くなりました。
でもその姿は、老いた姿ではなく、
スーツをきちんと着た、
30代くらいの働き盛りのころの頼もしい姿でした。
そのころの私は2,3歳で、
父にとっては可愛い盛りだったと思います。
「心配してくれてありがとう。
でも、まだ今は行けない。
成人したとはいえ、子供のことが心配。
もう少し生きていてやらなければ。」
と心の中でつぶやくと、すっと消えていきました。
私には霊感のような特別な能力はありません。
死と直面して、
意識が普通ではない状態だったからなのか、
病院という多くの人々の苦悩が渦巻いている
場所であったからなのかは、わかりません。
こんな年齢にもなって、
いつまでも親に心配をかけている娘です。
最後までおつきあいいただきありがとうございました。
よい一日をおすごしください。